細胞の学校 – Lesson 5 –

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2人に1人ががんになる時代

吉森先生

ダッキー、その後体の調子はどうですか?

ダッキー

おかげさまで、元気になりました。ありがとうございます!

吉森先生

それはよかった! 先日、病気のときは細胞の調子がおかしくなっているという話をしました。覚えていますか。

ダッキー

人間社会の仕組みと同じという話でしたね。

吉森先生

そうです。病気といってもいろいろありますが、がんの話題は避けて通れません。いまや2人に1人ががんになると言われる時代です。がんは、難しい言葉で「悪性新生物」と言います。2019年のデータで、日本人のうち生涯でがんと診断される人の割合は、男性で65.5%、女性で51.2%でした(1)

ダッキー

そんなに高いんですか。

吉森先生

日本人の死亡原因で一番多いものもがんです。2021年の死亡原因の1位で、全体の実に26.5%を占めています(2)

出典:厚生労働省 令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況
ダッキー

亡くなった方の4人に1人はがんが原因なんですか……。がんになるのも細胞が関係しているんですよね。

吉森先生

そうです。先日、細胞が元気になりすぎるのも問題という話をしましたね。「がん細胞」は、元気になりすぎた細胞なんです。でも、がん細胞といっても、もともと自分の細胞で、中身も普通の細胞です。ですから、がん細胞自身にしてみると、ごく普通の細胞として存在しているにすぎません。

ダッキー

がん細胞が、もともと普通の細胞ってどういうことですか?

がんは細胞の異常増殖。勝手に増えることが問題

吉森先生

がん細胞では、正常な細胞では起こりえないようなことが起こります。その話をする前に少し復習しておきましょう。人間の細胞は約37兆個で、その数は一定に保たれています。例えば、ひざを擦りむくと、傷口をふさぐために皮膚の細胞が一時的に増えますが、傷が治れば細胞の数も元に戻り安定します。これは正常な反応で、正常な細胞が増えたり増えるのをやめたりして体の状態を調節しているからです。

ダッキー

そのおかげで、一週間もすればひざの傷がきれいに治るという話でしたよね。では、正常な細胞で起こりえないことってなんでしょうか。

吉森先生

細胞が元気になりすぎて暴走すると、「もう増えなくていいんだ」という自制が利かなくなって、勝手に増え続けてしまいます。コントロールが利かなくなっている状態です。その結果、組織や臓器の正常な活動を邪魔したり、ほかの場所に移動したりすることがあります。ほかの場所で細胞の数がどんどん増えていくこともあります。皆さんが耳にしたことがある「転移」というものです。

ダッキー

がんの正体は、細胞が元気になりすぎて勝手に増えてしまうことなんですね。でも、どうして細胞が増えていくんでしょうか。

吉森先生

遺伝子の変異が関係しています。このあたりは、また別の機会にお話ししましょう。

ダッキー

確かに体のどこかで細胞が急に増え始めると、体のバランスが崩れてしまいますね。

吉森先生

そうです。また、「悪性」腫瘍と呼ばれるがんのほかに「良性」腫瘍というものもあります。良性の腫瘍は細胞の増え方も比較的ゆっくりで、ほかの場所に行きません。できる場所によっては症状が出ることもありますが、体に重大な影響をおよぼすことのない腫瘍です。

ダッキー

コントロールが利かず、体に大きな影響をおよぼすのが悪性なんですね。よくわかりました。

吉森先生

私たちの体はひとつひとつの細胞がお互いに支えあって絶妙なバランスを保っています。そのバランスが崩れると、大きな問題が起こります。

今日のまとめ

がんは細胞の異常増殖。勝手に増えることが問題。

出典・参考資料:『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』吉森保著 日経BP
(1)国立がん研究センター がん情報サービス 最新がん統計

(2)性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合

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