細胞の学校 – Lesson 10 –

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免疫って何?

吉森先生

今日は朝から笑顔ですね、ダッキー。何かいいことでもありましたか?

ダッキー

そんな、まるで私がいつもふてくされているみたいじゃないですか。最近、免疫力を高めるためによく笑うようにしているんです。

吉森先生

おや、ダッキーから「免疫」という言葉が出てきましたね!

ダッキー

新型コロナウイルス感染症の蔓延以来、「抗体」や「免疫」という言葉を聞くことが増えましたからね。でも、免疫って何ですか? 病気にならないように体を守ってくれる仕組みでしょうか?

吉森先生

そうですね。免疫とは、読んで字のごとく「疫を免れる」ことです。免疫には病原体などの「侵入者」を体から排除する機能があります。そのため、自分と自分以外(自己と非自己)を厳密に区別する能力が誰にでも備わっているんです。

ダッキー

なるほど。確かによそ者を見分けられないと、排除もできませんからね。

吉森先生

また、この力を利用して、外からの「侵入者」を排除するだけでなく、がん細胞のように侵入者ではないけれど「正常ではないもの」や移植細胞のように「自分のものではないもの(非自己)」を見分けることもできるんですよ。

ダッキー

風邪や感染症を防ぐだけでなく、異常な細胞も見つけてくれるんですね! でも、具体的にどういう方法で体を守ってくれるんでしょうか。

吉森先生

いい質問です。大きく分けて、3つの方法があります。まずは、涙や鼻水、皮膚、粘膜、凝固した血液などの「物理的な壁」により、ウイルスや病原体などの異物が入らないようにします。え、そんなことで?と思うかもしれませんが、例えば、涙や鼻水には殺菌作用のある酵素が含まれているんですよ。

ダッキー

そうなんですか! でも、そこをすり抜けて入ってくるウイルスや病原体も中にはありますよね。

吉森先生

そのときは、侵入した異物を食べてしまう技を使います。これが2つめです。

ダッキー

食べてしまう?!

吉森先生

ウイルスや病原体が侵入すると、「食細胞」と呼ばれる白血球が異物を食べ、分解してくれます。例えば、風邪で熱が出るときや、怪我をした箇所が熱を持っているときは、免疫が働いている証拠です。体温を上げることで、食細胞の働きが活発になるからです。

ダッキー

熱が出るのも理由があったんですね。

吉森先生

ほかには、自分のものではない細胞に穴を開けて殺してしまう細胞もあります。キラーT細胞という名前がついていて、がん細胞も殺してくれます。

ダッキー

すごい名前ですね。殺し屋までいるんですか……。

吉森先生

3つめは、抗体です。抗体については前回勉強しましたね。タンパク質のひとつで、ウイルスや病原体などの異物が体に入ってきたとき、その異物にくっついて排除します。このタンパク質はB細胞という細胞の中で作られています。食細胞、キラーT細胞、B細胞は「免疫細胞」とも呼ばれていて、免疫のプロ集団です。

ダッキー

細胞には免疫のプロがいるんですね!

免疫の種類

吉森先生

ところで、免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があるんですよ。

ダッキー

免疫に種類があるんですか。

吉森先生

そうなんです。先ほど話した食細胞は、外から侵入者が入ってきたときに、即座に反応して排除しようとします。人間だけでなく多くの生き物にもともと備わっている機能であることから、「自然免疫」という名前がついています。相手を選ばず、自分以外のものを排除しようとする特徴があります。

ダッキー

私たちが生まれつき持っている仕組みなんですね。

吉森先生

そうです。もうひとつは「獲得免疫」と呼ばれるものです。抗体や殺し屋のキラーT細胞がそうです。何がすごいかというと、よそ者に一度出会うとその「記憶」ができることです。前と同じものが侵入してきたら、「あ、これはあいつだ」とわかるんですね。例えば、水疱瘡や麻疹(はしか)には一度かかるともうかからないのも、同じ理由です。免疫が記憶して準備しているからです。

ダッキー

免疫があるってそういうことだったんですか!

吉森先生

例えば、子どもの頃に接種した3種混合ワクチンもこの原理を利用しています。ワクチンを接種すると抗体ができ、病原体が入ってきても排除してくれます。さらに、その情報を免疫が記憶しているため、同じ病原体が侵入してきたときには、すぐに攻撃ができるんです。

ダッキー

なるほど。子どものときにいろいろな予防接種をするのもそのためなんですね。

今日のまとめ

免疫は、「侵入者」を排除するだけでなく異常な細胞も見つけてくれる。また、「侵入者」を覚えている。

出典・参考資料:『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』吉森保著 日経BP

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