細胞の学校 – Lesson 4 –

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病気のときは細胞がおかしくなっている!

ダッキー

吉森先生、こんにちは。今日はちょっと体調が悪いんです。

吉森先生

おやおや。今日はダッキーの細胞がいつもと違う動きをしているんですね。

ダッキー

違う動き? 私の細胞に何かが起こっているんでしょうか?

吉森先生

細胞の中には人間の「社会」と同じような仕組みがあると言いました。人間社会では、システム障害でインターネットに接続できなかったり、停電で工場の生産ラインが止まったりすると、社会の仕組みがうまく機能しなくなりますよね。細胞の社会でも同じです。病気のときは、細胞の調子がおかしくなっているんです。

ダッキー

人間社会で考えると、確かにいろいろなところに影響が出てきますね。でも、「細胞の調子がおかしい」って、具体的にどうなっているんでしょうか。細胞の中の「工場」や「発電所」がちゃんと動いていないんでしょうか?!

吉森先生

細胞についてだんだん詳しくなってきましたね、ダッキー! 「細胞の調子がおかしい」と一口に言っても、さまざまな形があります。たとえば、細胞そのものが死んでしまうこともあります。アルツハイマー病やパーキンソン病がそうです。

ダッキー

アルツハイマー病やパーキンソン病も、細胞が関係しているんですか!

吉森先生

そうなんです。また、細胞が元気になりすぎるのも問題です。皆さん、新型コロナウイルス感染症のニュースで、「サイトカインストーム」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。ウイルスが体内に入ると、免疫応答といって、ウイルスを攻撃し排除するシステムが働きます。でも、この免疫システムの反応が強すぎて「暴走」(サイトカインストーム)すると、ウイルスに感染した細胞だけでなく正常な細胞まで攻撃してしまいます。その結果、血栓ができたり、全身状態が悪くなったりして重症化すると死に至る場合があります。

ダッキー

細胞が暴走……。やりすぎてしまうんですね。

吉森先生

このほかにも、エネルギー工場で事故が起きることがあります。

ダッキー

細胞の中では、ミトコンドリアがエネルギーを作っているんでしたよね。

吉森先生

そのとおりです! ミトコンドリア(工場)に傷がついて壊れると、細胞を酸化させる「活性酸素」が漏れ出てしまいます。活性酸素にはウイルスから体を守る大切な役割もありますが、工場から活性酸素が漏れ出ると、体内のタンパク質や脂肪の酸化が進んだり遺伝子の変異を引き起こしたりする場合があります。そうなると、脳梗塞、糖尿病、動脈硬化などさまざまな病気の原因になります。ちなみに、シミやシワの原因は、活性酸素なんですよ。抗酸化、抗酸化と化粧品やサプリメントなどのコマーシャルで謳っている理由がわかりますね。

ダッキー

シミやシワ! 大変です。病気というと、そこだけを見がちですが、細胞から始まっていたんですね!

細胞が体内状態を一定に保っている

吉森先生

「ホメオスタシス」という言葉を聞いたことがありますか?

ダッキー

オルガネラの次は、呪文のような言葉が出てきましたね!

吉森先生

ははは、ダッキーはおもしろいですね。もともとギリシャ語から造られた言葉で、体の中の環境を一定に保つという意味です。難しい言葉で「恒常性」といいます。外の気温にかかわらず、夏でも冬でも人間の体温はいつも36度ぐらいですよね。風邪をひいても、数日たてば元気になります。血糖値、体内の水分量、塩分濃度も一定に保たれています。これらすべてがホメオスタシスです。

ダッキー

体温36度は当たり前だと思っていました……。私たちが普段当たり前だと思っていることは、実は当たり前じゃないんですね。

吉森先生

元気なときは、考えませんからね。勉強や仕事で寝不足になると、次の日はやたら眠かったり、疲れやすかったりします。これは、細胞が恒常性を保とうとしているためです。体を休ませて疲労回復をはかるために眠くなるんですね。また、ダイエットをしたことのある人は、あるときから体重がなかなか減らなかった時期があると思います。これは、細胞が「もうこれ以上やせなくていいよ!」という命令を出し、体内の状態を一定に保つために細胞同士が働きかけているからです。体内状態が一定に保てなくなると、体にとってはもちろんですが、細胞にとってもよくありませんからね。お互い持ちつ持たれつということです。

ダッキー

そうなんですか! やはりどこにいっても元をたどれば細胞に行きつきますね。

吉森先生

そういうことです。ダッキー、お大事にしてくださいね。

今日のまとめ

病気のときは細胞がおかしくなっている! 体内状態が一定に保てるのは細胞のおかげ。

出典・参考資料:『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』吉森保著 日経BP

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