細胞の学校 – Lesson 7 –

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病気は遺伝する?

ダッキー

吉森先生、今日はちょっと質問から始めてもいいですか?

吉森先生

もちろん!

ダッキー

ありがとうございます。細胞が酸欠になったり死んでしまったり、または元気になりすぎて勝手に増えてしまったりすることで病気になることをこれまでに学びました。素朴な疑問として、こういった病気は遺伝するんでしょうか?

吉森先生

わあ、ダッキーから「遺伝」という言葉が出てきたのでびっくりしました!

ダッキー

もう7回目ですからね! 私もわからないなりにいろいろ考えています!

吉森先生

すばらしいです。では、今日は遺伝子について少しお話ししましょうか。ニュースや新聞でも、遺伝子治療、遺伝子変異といった言葉を目にすることが増えましたね。

ダッキー

はい、例えば「がん家系」という言葉がありますよね。あれは、父親ががんになったら、自分もがんになるかもしれないということですか。

吉森先生

必ずしもそうとは言えません。私たちの体には二万数千個の遺伝子があって、遺伝子の変化は病気と確かに関係しています。ただ、全ての遺伝子変化が病気と関係があるわけではありません。その中でも、例えばがんに関連する遺伝子が変化すると、がんになる確率が高くなります。遺伝という意味で言うと、がんに関連する遺伝子変化を持った人の子どもは、ある種類のがんになるリスクがほかの人よりも高くなります。とはいっても、必ずがんになるわけではありません。あくまでもリスクが高くなるということです。

ダッキー

がんに関係した遺伝子があるんですか。その遺伝子が変化することにより、がんになる確率が上がるんですね。

吉森先生

そうです。このあたりは、これから少しずつ勉強していきましょう。例えば、乳がん、卵巣がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、1型糖尿病なども遺伝する病気です。ただ、同じ糖尿病でも、1型糖尿病は遺伝子の変化によるもので、2型糖尿病は食生活などが原因で遺伝子の変化は関係ありません。

ダッキー

なるほど。遺伝する病気とそうでない病気があるんですね。

DNAはアルファベット、遺伝子はアルファベットを使った文章

ダッキー

ところで、遺伝子とDNAは同じものですか?

吉森先生

いい質問です! 同じだと思っている人が多いんですが、ちょっと違います。DNAはデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)の略で、遺伝子の素材になるものです。単語や文を作っているアルファベットだと考えて頂ければいいと思います。ただ、アルファベットといっても、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類だけです。簡単に言うと、DNAはアルファベット、遺伝子はアルファベット(DNA)を使って書かれた文章のことです。

ダッキー

アルファベットと文章ですか!

吉森先生

細胞の中では、この4つのアルファベットが繋がって、らせん状の2本の鎖のような形をしています。これが遺伝子です。

ダッキー

この鎖の画像、見たことがあります! でも、DNAというアルファベットを使って、一体どんな文章が書かれているんでしょうか?

吉森先生

DNAで書かれた文章には、タンパク質を形作っているアミノ酸の並び順が書かれています。タンパク質にはそれぞれさまざまな仕事があるという話をLesson 3でしましたね。その仕事内容がどうやって決まるかというと、タンパク質の種類です。何万種類もあるといわれる多種多様なタンパク質の種類は、アミノ酸の並び順で決まります。その並び順を決めているのは、たった4つのアルファベット(DNA)で書かれた文章なんです。

ダッキー

つまり、遺伝子がタンパク質の仕事を決めているということですか!?

吉森先生

遺伝子は、人間の体を作ったり維持したりするためのタンパク質の設計図なんです。この4種類のアルファベットの並びが変わったり、一部が無くなったり、逆に増えたりすることが遺伝子の変化と呼ばれるものです。これにより、正常なタンパク質が作れなくなると病気になることがあります。

ダッキー

さっき先生が話していた遺伝子と病気の関係の話ですね。

吉森先生

そうです。ある特定のDNAが変化した遺伝子が親から子どもに受け継がれると、特定の病気になるリスクが増すということです。同時に、たった4種類のアルファベットの並び順がもとになり、何万種類のタンパク質が作られ、それぞれの役割を果たすことで、人間の体が作られ、リフォームされ、生命が維持されていると考えると、とんでもなくすごいことだと思いませんか?

今日のまとめ

遺伝子の変化により、病気が遺伝することがある。DNAはアルファベット、遺伝子はアルファベットを使った文章。

出典・参考資料:『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』吉森保著 日経BP

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