
“腹八分”の教えとその由来
昔から「腹八分目に医者いらず」ということわざを聞きます。
このことわざは「健康のためには、満腹になるまで食べないで、八分目ぐらいでやめておくのがよい」。もしくは、「食事をする時は、常に腹八分くらいで抑えておくほうが、健康でいられる」という意味として用いられます。
この言葉は、江戸時代の医師である貝原益軒(かいばらえきけん)の著書『養生訓』に書かれている「腹八分目」という言葉が由来となっています。
食べる量を腹八分目にすることで内臓への負担が軽減でき、健康寿命を伸ばすことに繋がり、見た目の若々しさを保つことができると考えられてきました。このような言い伝えは経験則による物が大きいと考えられてきましたが、実はこの「腹八分目」は、オートファジーで紐解くことができるのです。
オートファジー活性の仕組み
人は空腹を感じると「サーチュイン遺伝子」という遺伝子が活性化することが解明されてきました。サーチュイン遺伝子とは、長寿遺伝子などとも呼ばれ、健康とアンチエイジングのために重要な働きをします。このサーチュイン遺伝子が活性化することにより、ミトコンドリアが増えることに加え、オートファジーも活性化するのです。

活性化するために必要な2つのスイッチ
しかし、オートファジーはいくつかのスイッチによって制御されています。その1つが栄養スイッチです。食事の量を減らしてカロリーを制限するとスイッチが稼働しなくなり、オートファジーへのブレーキがかかりにくくなることで活性化します。もう1つがエネルギーの低さを感知するスイッチです。空腹の時間を意識的に作ることで身体を飢餓状態にすると、オートファジーが活性化してエネルギーを増やそうとします。

「腹八分目」が健康の鍵を握る
「腹八分目」とは、食べ終わったあとに「もう少し食べられそう」と感じるくらい、つまり適度なカロリー制限を行うということです。オートファジーの活性化には、カロリーを制限して満腹にならない状態を作ることが鍵になるということです。

オートファジーで昔の知恵を現代に活かす
昔から伝わってきたことわざや伝承が、オートファジーという最新の研究によって、そのメカニズムが解明され、これからますます注目を浴びる可能性があります。
先人の知恵や歴史が現代の私たちの生活につながるというのも、とてもおもしろいですね。

「その習慣、オートファジー」とは?
昔から伝わることわざや生活習慣、日々の知恵が、実は科学的にも注目されている「オートファジー」と深く関係していることをご存知ですか?
このコラムでは、あなたが普段から意識せずに続けている習慣が、実は体内の細胞をきれいに保ち、健康や美容をサポートしている可能性を解説していきます。