石堂美和子さん(後編)|オートファジーの産業化に向けた現在と未来の課題とは

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日本発オートファジーベンチャー企業の立ち上げを「私の社会貢献プロジェクト」と表現する株式会社AutoPhagyGOの石堂美和子さん。基礎研究と臨床開発の橋渡し役を担う石堂社長はオートファジーの現在と未来についてどう見ているのか、お話をうかがいました。

日本でオートファジーベンチャーを立ち上げることが社会貢献活動になるとおっしゃっていましたが、どういった意味でしょうか?

現在の創薬でよく見られるスキームは、ベンチャーが創生・開発した医薬品候補を大手製薬企業が買い取るという開発構造です。日本では創薬開発期間を支えられる創薬ベンチャー産業がまだ育成出来ていないため、基礎研究では日本がトップを走っていたのに実用化で海外に先を越されるという悔しい思いをした事例が数多くあります。私はその実例を、製薬企業に勤めていたときに数多く見てきました。オートファジーでも同様の流れができてしまうのではないかと危惧していて、そうなってしまったらと思うと、とても悲しいです。一人でできることは限られますが、それでも頑張ったら何とかなるかもしれないと思って活動を続けています。

なるほど。研究は日本が行ったのに、その利益の恩恵が海外に流れてしまうというのは避けたいですね。オートファジーで同様のことが起こらないようにするためには、何が必要なのでしょうか。

オートファジーを産業活用する際の基盤となる国際ルールを、日本が主体となって作る必要があるでしょう。日本は基礎研究には長けていますが、産業活用に関してはヨーロッパやアメリカに劣ります。ヨーロッパではルール作りをする際に最初から国や政府と協議しながら行っていますし、アメリカではベンチャーキャピタルが多額の資金を投入することで次々に特許を取得することが可能になっています。私は、ヨーロッパと協力することでオートファジーに関する産業基盤のルール作りに日本も参加できれば、そのルールで製品作りができるようになり、基礎研究の恩恵を日本が受け取ることができると考えています。その取り組みの第一歩が、弊社や弊社が社員となっている日本オートファジーコンソーシアムが行なっている、オートファジー活性を測定する際の基準作りです。

基準作りへの日本の参画が、今後のオートファジー産業化の鍵になるのですね。このほかにもさまざまな課題があると思いますが、課題解決に向けたコンソーシアムと貴社の今後の活動について教えてください。

やはり産業化には、オートファジーの啓発が必要でしょう。「オートファジー活性を正しく測定して、生活に生かしてみたい」というニーズが広がることが必須です。

具体的にはまず、「オートファジーをしっかり製品化して産業化していくのだ」という企業の仲間集めを進めます。コンソーシアムは現在、経済産業省の補助金なども活用しながら運営していますが、将来的には参画企業を少なくともいまの倍にして、自立した運営を目指します。弊社に関しては、これまでは企業から提案された素材の開発をお手伝いすることが多かったのですが、これからは弊社がご提案できる新しい素材について、ラインナップを増やしていく予定です。

測定のニーズを掘り起こすためには、一般の方にもオートファジーを身近に感じてもらう必要があるかと思います。そのために必要なことは何でしょうか?

4つのことが必要だと思います。「サイエンスリテラシーを上げること」「細胞を理解してもらうこと」「オートファジーの可能性を知ってもらうこと」「生活に取り入れてもらうこと」です。でも、そのための方法はいろいろあっていいと思っています。例えば、オートファジーはリサイクルと思想が似ていて、「壊す仕組みを意識すること」が大切です。この考え方はとても日本的で本質的だと感じています。異業種とコラボレーションして、その考え方を理解してもらうのもいいでしょう。高層ビル解体には日本の技術が集約されていると聞きます。建築業界とオートファジーがコラボしたら楽しそうですし、これまでになかった取組を通じて、日本への貢献にもつなげていきたいです。

プロフィール

石堂 美和子さん

株式会社AutoPhagyGO 代表取締役社長

東京大学理学部、京都大学大学院卒。理学博士。スクリプス研究所ポストドクトラルフェロー、アールアンドアール株式会社主任研究員を経て、外資製薬企業のヤンセンファーマ株式会社、アッヴィ合同会社でマーケティングおよびメディカルアフェアーズに従事。2019年より、株式会社AutoPhagyGOの取締役を兼任。2020年6月より、株式会社AutoPhagyGOの代表取締役社長に専任。

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