加齢と老化。どうして老化する?
おや、ダッキー。今日はどうかしましたか? 表情が暗いですね。
実は、昨日徹夜したせいか、疲れがとれていないんです。これも加齢のせいでしょうか。
まず、徹夜はいけませんね。無理はしないように! ところで、加齢と言いましたが、加齢と老化は別物ですよ。
どちらも年をとることじゃないんですか?
加齢とは年齢を重ねることで、生まれてから今までに経過した時間のことです。同じ年に生まれた人たちは、20年経つと皆20歳です。つまり、毎年1歳ずつ年を重ねていくという意味では皆平等です。一方、老化は年を重ねていくにつれて身体機能が低下することです。老化のスピードは人によって異なるので、加齢と違って平等ではないんですよ。
年をとっていくことの捉え方の違いなんですね! でも、老化が平等じゃないってどういうことですか?
老化のスピードは、遺伝子や細胞など人がそれぞれ持っている内的要因だけでなく、環境や生活様式などの外的要因にも左右されます。同じ年齢でも、とても若々しく見える人と、そうでない人がいますよね。
どうして老化が起こるんでしょうか?
例えば細胞でいうと、体の中の環境を一定に保つホメオタシスの機能が加齢に伴って低下します。
Lesson4で勉強した恒常性の話ですね!
そうです! また、人間の体は常に細胞分裂を繰り返しているという話をしたと思います。でも、分裂できる回数には限界があります。そのほかには、DNAが傷ついたり、老廃物などを分解する細胞の中の機能が低下したり、新しい細胞を生み出す幹細胞の数が減ったりすることでも老化が進みます。
細胞そのものも老化しているんですね! ただ、老化と聞くと、何となくネガティブなイメージがあります。
生物学的にみると、人間は120歳ぐらいまで生きることができるといわれています。科学の力で病気にならないようにする研究や老化を止めようとする動きもあります。アンチエイジングを謳った商品も店頭にたくさん並んでいますね。老化の研究が進むと、人間は死ななくてもいいという日が来るかもしれません。
平均寿命と健康寿命
日本人の平均寿命は延びていますよね。1955年には男性63.60歳、女性67.75歳だったのが、1990年にはそれぞれ75.92歳、81.9歳になり、2019年ではそれぞれ81.41歳、87.45歳です(1)。ちなみに、2022年では、日本人の約3600万人が65歳以上です(2)。総人口の29.0%なんですよ!
よく調べましたね、ダッキー! 確かに平均寿命は延びていますが、健康寿命は何歳ぐらいか知っていますか?
健康寿命って何ですか。
日常生活が健康関連の問題による制限なく生活できる期間のことです。2019年の健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳です(3)。
平均寿命とずいぶん差がありますね。最後の10年ほどは、健康関連の問題がある方が多いということになりますね。
そうなんです。同じ長生きするなら、心身ともに健康な状態で過ごしたいですよね。
死ななくてもいい日がくるかもしれないということは、老化は止められるという意味でしょうか?
いい質問ですね。老化を抑えて寿命を延ばすには、細胞の存在が大切になってきます。これについては、また次回お話ししましょう。
はい!
今日のまとめ
加齢は平等、老化のスピードは人により異なる。平均寿命より健康寿命。
(1)厚生労働省 図表1-2-1 平均寿命の推移
(2)令和5年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)高齢化の状況 1.高齢化の現状と将来像(PDF形式:862KB)
(3)eヘルスネット 平均寿命と健康寿命
出典・参考資料:『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』吉森保著 日経BP