フレイルや認知症など、加齢に伴う身体機能の低下や加齢性疾患の発症とオートファジーの間にはどのような関係があるのでしょうか。大阪大学 高等共創研究院 大学院生命機能研究科 准教授・中村修平先生の監修で解説します。
多くの臓器で恒常性を保つことにより加齢に伴う疾患を予防
アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患をはじめ、筋肉のフレイルやサルコペニア、目における加齢性疾患や網膜変性疾患、骨粗しょう症、皮膚や毛髪の老化、脂肪肝をはじめとする生活習慣病にもオートファジーが重要な役割を果たしています。
例えば骨では骨芽細胞でオートファジーが活性化すると丈夫な骨が作られ、骨粗しょう症を予防します。一方で皮膚や毛髪なども、正常な役割を果たす上でオートファジーによる代謝が必要です。また、筋肉ではアミノ酸のリサイクルを行うことで、介護状態を招くフレイルやサルコペニアの発症予防につながります。
オートファジーの役割や目的は細胞ごとに異なり、最も寿命の長い神経細胞ではタンパク質を長持ちさせること、対して皮膚のように回転の速い細胞では効率的に代謝を行うことが重要で、オートファジーはそれぞれに関与しています。
オートファジーは身体のあらゆる臓器において、恒常性を保つために欠かせません。例えば、脳でオートファジーが起こらないマウスを作るとアルツハイマー病やパーキンソン病などと同じような症状を呈することに加え、その疾患に特有の凝集タンパクが蓄積します。つまり、オートファジーが神経変性疾患の原因となるタンパク質を分解しているということです。
もう少し細かく言うと、オートファジーには「選択的オートファジー」と呼ばれるさまざまな機能があります。これには脂肪滴(しぼうてき)を分解する「リポファジー」や、傷付いたミトコンドリアを分解する「マイトファジー」、DNAなどの核小体を分解する「ヌクレオファジー」など。このうち、「マイトファジー」と「ヌクレオファジー」などは寿命との関連性が既に論文で示されています。
ただ、これらの相互関係はまだ分かっていません。現状は、オートファジーの中で総合的に必要な因子が長寿の鍵を握るということまで分かりました。近年、これに続いて選択的オートファジーが解明されつつあります。この2種類のオートファジーと長寿との関係について、今まさに研究が進められているところです。