健康長寿につながる生活習慣とオートファジー

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オートファジー活性を高めることが健康長寿につながる可能性が注目を集めています。具体的にはどのような生活を送ればよいのでしょうか。大阪大学 高等共創研究院 大学院生命機能研究科 准教授・中村修平先生の監修で解説します。

「よい習慣」がオートファジーの活性を上げ寿命を延ばす 

適度な運動や規則正しい生活、バランスの良い食事や「腹八分目」など、昔から“よい習慣”とされてきたような生活習慣には、オートファジーを活性化するという共通点があることが最近の研究でわかってきました。つまり、“よい習慣”が長寿につながる科学的根拠の一つはオートファジーの活性化にあり、オートファジーを活性化して健康寿命を延ばすためには“よい習慣”が重要であると言えそうです。

それぞれの習慣がオートファジーを活性化する仕組みについて見ていきましょう。

バランスのいい食事

バランスが良いと食事そのものに加えて栄養成分ごとの吸収も良くなり、オートファジーの活性を上げることにつながります。また、脂質の中では飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸の方がオートファジーを活性化するので、総合的に見て和食は優れていると言えるでしょう。

腹八分目

「腹八分目」とはつまり、適度なカロリー制限を行うということです。

私たちの身体の中でオートファジーはいくつかのセンサーによって制御されていて、1つめはmTOR※という抑制系の栄養センサーです。カロリー制限によってmTORが稼働しなければ、オートファジーへのブレーキがかかりにくくなることで結果的にオートファジーは活性化します。

もう1つはAMPK※というエネルギーの低さを感知するセンサーです。カロリー制限で体内のエネルギーが十分に足りていないと、オートファジーを活性化して使えるエネルギーを増やそうとします。カロリー制限でオートファジーが活性化する仕組みは大きくこの2つが考えられます。

※mTOR(mammalian target of rapamycin):栄養過剰により活性化されるタンパク質複合体で、アミノ酸やグルコース、インスリンなどの成長因子を感知する。
※AMPK(AMP-activated protein kinase):細胞内でエネルギー不足の状態をAMP/ATP比の上昇として感知し、活性化されるエネルギー不足感受シグナル。

適度な運動

運動すると上述のmTORの抑制やAMPKの活性化に加え、ミトコンドリアから出る低濃度の活性酸素種なども引き金となってオートファジーが活性化します。加えて、エネルギーを消費することで一時的なカロリー制限にもなり、これもオートファジーの活性化につながります。

規則正しい生活

1日のうち、オートファジー活性が比較的高い時間帯と低い時間帯があると考えられています。ショウジョウバエの実験では、オートファジーが高くなる時間帯にオートファジーを高めたところ、健康寿命が延伸しました。規則正しい生活をすることで、概日リズムが一定に保たれることでオンとオフができ、オートファジー活性のメリハリがつきやすくなります。

日常的な動作や仕事のパフォーマンスなどで衰えを感じ始めたら、こうした“よい習慣”を実践してみるのもおすすめです。

上記のうち、できることからオートファジー活性を意識した生活を始めてみてはいかがでしょうか。

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