美容領域における具体的なオートファジーの活用

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美容というと肌ではシミの他にもしわやツヤ、髪の毛では薄毛や脱毛など人生100年時代においては悩みが絶えません。具体的にオートファジーはどのように活用できるのでしょうか。近畿大学 薬学総合研究所 先端バイオ医薬研究室  森山麻里子先生、森山博由先生の監修で解説します。

脱毛とシミに対してオートファジー研究に高まる期待

オートファジー研究の成果を実際に化粧品などへ応用するには、たくさんの課題があります。現状では、培養皿の中でヒトの表皮細胞を培養し、作用を期待するような成分をかけたときにオートファジーの活性が変化するかどうかを確認して有用性を判断することがほとんどです。

これまでの研究で得られた数々の報告はマウスなどの動物実験によるものが多く、ヒトに対して使ったときにも同じ効果が得られるかどうかはまだ分かりません。

一方では興味深い論文もあります。

2019年に米国で発表された毛髪に関する研究では、成長が休止している状態の毛包(もうほう)に低分子化合物を与えて刺激すると、オートファジーが誘導されることで休止期が短くなって成長が促進されたという論文です。そこでは、老化したマウスにその化合物を飲ませたところ、脱毛を防ぐことが出来たという報告もあります

※紹介している研究報告は、脱毛症における毛髪再生について検証したものではありません。

また、皮膚に対してはオートファジーがターンオーバーを正常に保つために必要という観点から、シミの予防にも一役買っていることが考えられます。シミには幾つかの誘因があり、たとえば、メラノサイトからの色素の産生や排出の異常、色素を受け取るケラチノサイト内での色素の分解機構の異常などが挙げられます。実際、これらに部分的にオートファジーが関わるという報告もあります。

つまり、オートファジーが適材適所で働くことでメラノサイトやケラチノサイトが健やかに保たれ、皮膚のターンオーバーが正常に行われれば、たとえば、紫外線にあたって一時的に日焼けしたとしても、すぐに表皮が生まれ変わって元の白さに戻ることが可能となるのです。

加齢に伴うオートファジー活性の低下については、毛髪や皮膚よりも研究の進んでいる血液や筋肉の幹細胞において幾つか報告されています。

近い将来、加齢による脱毛の仕組みや、黒髪が白髪に変わっていくメカニズムなどもオートファジーによって解明される日がくるのかもしれません。

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